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ディスクブレーキとホイール剛性 [エンヂニアりんぐ]

「エンヂニアりんぐ」コーナーではこれまでVブレーキについて書いて来ましたが、今回は色々思う所が有ってディスクブレーキ編です。

いまやロードバイクですらディスク搭載が増えて来ている世の中で、唯一時代に逆らっているのがトライアルの世界。
26インチは前後リムブレーキが主流だし、一時期は前後ディスクが標準になっていた20インチですら、一部のトップライダーがリムブレーキに戻していますね(特にフロント)。

軽量であるとか、ディスクローターをヒットするのが嫌とか、リムブレーキにするメリットは幾つかあると思いますが、
一番の理由は、ディスクでは避けて通れない「ホイールのたわみ」を嫌ってのことだと思います。
ホイールの中心のハブを止めるディスクブレーキは、スポークがたわむことでホイールが「ねじれる」分だけ、ロックさせて静止するまでにタイムラグが生じます。

一方、リムブレーキのほうがロックするまでのブレーキ力の立ち上がりが早く、ホイールのたわみの影響を受けないのでピタッと止めるのに向いています。

26インチのリアブレーキに関しては、フレームの耐久性も問題視されてきましたが、やはりこの「ブヨブヨ」感が払拭できずに淘汰されました。
しかし、フロントブレーキに関しては、下りのコントロール性などメリットもあり、今でもフロントはディスクが良いと言うライダーも多いと思います。

しかし、それでも例の「ブヨブヨ」感は気になります。
私もずっと気にはなってましたが、今回フォークを新調したところ、より一層ホイールの剛性不足が目立って来たのでちょっと考えてみました。


まず、ホイールについて、スポークの組み方などを勉強します。
スポーク数はいろいろありますがトライアル用だと今はほとんど28Hと32Hが主流のようですね。

スポークの交差はリムブレーキだとラジアル組(0交差)もありますが、最も一般的なのは6本組(3交差)です。
こんな感じ。
スクリーンショット(2016-04-19 23.33.10).png

この向きに見て、時計周りにハブをねじろうとすると、赤いほうのスポークが引っ張られます。
一本だけを図示するとこんな感じになります。
スクリーンショット(2016-04-19 23.33.28).png
このスポークの張力と、回転させようとするトルクが釣り合うんですね。

ということは、直感的にはこのスポークの引っぱり方向とハブの接線方向が一致する(β=90度)が、最もトルクに対する剛性が高そうな気がします。
スクリーンショット(2016-04-19 23.35.18).png

ハブの穴数と、交差数でこの角度βがどう変化するかを表にするとこんな感じ。
スクリーンショット(2016-04-19 23.56.01).png

2交差は一般的でないので無視。ラジアル組はトルク方向に張力が全く働きませんのでこれも無視。

一番90度に近いのは36Hの4交差です。
次に90度に近いのは32Hでは無く、28Hの3交差組み。しかし、スポーク数が少ない分だけ、1本のスポークが受け持つ荷重が増えるので、角度が適正に近くて剛性が出るか、スポーク数の減少の影響のほうが大きいのか、どっちに転ぶか分かりませんね。

では実際に計算してみます。
スクリーンショット(2016-04-20 0.05.19).png

ハブが角度αだけねじれた時に、スポーク長はTからT'へと伸びます。
三角関数を使えばT'は求められます。
スポーク長がT→T'になった時の張力の変化は、スポーク材料のヤング率、断面積を掛けることで計算出来ます。

これを負荷を受け持つスポークの数だけ掛け算して、スポーク数の影響も忘れずに加味します。

・・・今回も計算式自体は省略します。エクセルに入力してサクサクと計算していきます。
興味がある方は自分でも考えてみてね。
スクリーンショット(2016-04-20 1.09.45).png
ここでの縦軸は、ハブのねじれ1°あたりの回転トルクです。数値が大きいほど、ねじれるのに大きな力が必要=剛性が高いということです。

やっぱり36Hの4交差が最も剛性があります。これは一般的にもよく言われていますね。
36Hの3交差は、32Hの3交差とさほど剛性は変わりません。さらに、32Hでは4交差にしてもむしろ90度から離れていき、あまり剛性は上がらないようです。
なので、32Hでは3交差が一般的なのですね。
そして、角度では90度に近い28Hの3交差ですが、やはりスポーク数の減少ぶんだけ、剛性は低いという結果になりました。

次に、ハブのフランジ径の影響を見てみます。フランジ径の大きい(いわゆるラージフランジ)ハブは剛性が高いのは想像できますね。
スクリーンショット(2016-04-20 0.24.36).png
(※全て32H、3交差で計算)
結果はこの通り、フランジ径の効果は絶大のようです。


さて、続いて、実際に市場で売られているトライアル向けのハブの性能を比較してみましょう。
今回ピックアップしたのは以下の銘柄のハブ。今イギリスに居るので、価格はポンドです(笑)
スクリーンショット(2016-04-19 23.39.23).png

この表だけを見て、あなたならどのハブを買いますか?
一番軽いヤツ、一番強そうなヤツ、、、まあ人によって違いますよね。
やっぱりフロントは軽さで選ぶ人が多いかな?
私は、価格の割りに軽くてコストパフォーマンスの良いEchoTRを選びました。


さて、実はハブ単体の重量だけを比べるのはフェアではありません。
28Hのモデルは、スポーク数を減らせるぶんだけホイール重量は軽くできます。
また、フランジ径が大きいものはハブの重量がありますが、スポークはその分短くなります。

そこで、それぞれのハブの性能を、
1)回転トルクに対する剛性(ディスクブレーキ用として重要な性能)
2)ハブ+スポーク重量(トータルとしての軽さ)
この2つの軸で評価してみます。

スクリーンショット(2016-04-19 23.40.00).png

やはり28Hのモデル達はトータルでも軽くなります。しかし、トルクは低いものが多く、軽ければ軽いほど、剛性が低いようです。
32Hのモデルは、フランジの大きいグループは非常に剛性が高いですが重量もそれなりに重いですね。
グラフ全体の傾向を見れば、基本的に「重い物ほど、剛性は高い」となりそうです。
軽量命ならJitsie Race、剛性ならKing、HOPE。バランスならJitsie(ノーマル)あたりでしょうか。

しかしここで価格というものを考慮するとどうなるか。

上のグラフの「回転トルク」を「ハブ+スポーク重量」で割ったもの
=重量あたりの剛性 を縦軸として、価格と比較したものが下のグラフです。
スクリーンショット(2016-04-19 23.45.29).png

これで各社の開発コンセプトが明確になりました。

重量あたりの剛性が他を圧倒して高いのがChrisKingです。そして、値段も高い!
でもそれだけの価値があると言うことです。
フロントハブ166gって、「クソ高い割にたいして軽くないじゃん!」なんて思っちゃいけません。ディスクブレーキに必要な「剛性」という性能と対比した上で「最軽量」なんですね。

そして、32Hのモデルでは「低価格ほど、重量あたりの剛性は低い」ということになり、最も低いのがEchoTRです。やっぱり、安いものとは、そう言うことなんです。
私もお手軽さでEchoTRにしたものの、なんだか頼りないなあと思うのは、やっぱりね。。。

そしてもう一つ、注目しておかねばならないことがあります。28Hのモデルに関して言えば、「価格が高いほど、重量あたりの剛性は低い」という傾向があること。

これは何を意味しているかと言うと、28Hのハイエンドモデルは軽量化を第一優先にしていると言うこと。トルク剛性が下がっていくことに目をつぶって、極端にフランジ径を小さくしたりした結果です。

つまり、「価格が高い=軽い」というのはだいたいの場合正しいのだけど、
「価格が高い=高性能」というのは、必ずしも成り立たない。ということ。

もし、「軽量化命!軽ければなんでも良い!」と思うなら、Jitsie Raceなんかは最高の物になるでしょう。
しかし、トライアルでは狙った所でガツッと止まる、ブレーキ性能はとても重要な訳です。
そう言う視点で、本当に自分にとっての価値が有るものを選びたいですね。


さて、「何でもカンデモ軽量化」は大嫌いな私ですが、それはやっぱり「軽量化と性能のトレードオフ」があるから。

次に示すのは、ホイールの軽量化手段として考えられる「スポーク径を細くする」と、「チタンスポーク」そして、ディスクと反対側をラジアル組にする「変則組」。

ちょうど、28Hと32Hが選べるTrialtech SLハブがあるので、スポーク数の影響も見てみます。
スクリーンショット(2016-04-19 23.42.30).png

見れば明らかな通り、スポークを細くする、チタンスポークにすることで軽くはなりますが、剛性も落ちていきます。
片側ラジアル組なんて、ほとんど軽くならないのに剛性は明らかに落ちます。
つまり、見た目のオシャレくらいしか、やるメリットはありません(笑)

いくら軽くなるからって、26インチでチタンスポークとか、28Hの1.8mmスポークとかはやらないほうが良いということです。


・・・以上。疲れた。

今回の計算は単純ですが、実際にはハブボディのねじれ剛性や、シャフトの剛性なんかも考慮しなければいけません。きっと、それを考慮しても似た傾向にはあるとは思いますが。


さて、次のホイールは何にしようかな。。。
前々から、クリスキングのリアハブには絶大の信頼を置いていると言ってきていますが、こうやってフロントハブの比較をしても、その物作りの確かさに改めて驚きますね。
まず絶対の性能と剛性、耐久性。それを確保した上での最軽量を目指す。ということでしょうか。
フロントもキングにしちゃいたい欲求にかられます(笑)
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